エンジンセッティング

ここでは具体的なセッティング例ではなく、基本的な理論、特性を書きます。

具体例はコース別のセッティング欄をご覧ください。

エンジン本体

エンジン本体については実際に行われているレースのレギュレーション上、ほとんどはブラグ変更による圧縮比しかいじれませんが、各部位についての基本理論を明記しておきます。

圧縮比は、基本的には上げた方が(燃焼室容積を少なくする。プラグを長いものに変更)パワー(トルク)が出ます。しかし上げすぎるとデトネーション(異常燃焼)によるトラブルを起こしたり、高回転のオーバーラン特性がスポイルされて、頭打ちが明確に出てしまい、パワー特性が低速寄りでパワーバンドが狭くなってしまいます。簡単に言えば圧縮比が高いと、メリハリのあるエンジン、低いとパンチは無いがパワーバンドの広い、電気モーターのような特性になります。

これはコース特性やファイナル(ギア比)によって組み合わせる事で、それぞれのメリットを生かしてセッティングしましょう。実際には、直線が短く、常用回転域の狭いコースでは圧縮比を高めにして、タイムによってパワーバンド内に入る様、ファイナルを選択すれば良いでしょう。

ただしプラグで圧縮比を上げると、当然燃焼室内にプラグが飛び出している訳で、デッドゾーンが増えて未燃焼GASが増えて効率が悪くなります。本来はスキッシュエリアを始め、適正な燃焼室形状がありますので、本来のレーシングエンジンでは、スキッシュエリアも同じにして燃焼室形状を比例して変更したシリンダーヘッドを変える事で、圧縮比の変更を行います。(ロビンエンジンはシリンダーとヘッドが一体化の為、ベースガスケットを薄くしたり、シリンダーの下面研磨をするしかありません。しかしポートタイミングが下がる等のデメリットもあります)またスキッシュエリアが狭くなってしまいますが、ロビンは1ミリ以上のクリアランスがありますので、スキッシュエリアについては狭い方が燃え残りも少なくなり、効率は上がりますが。

点火タイミングはローターのウッドラフキーを外して取り付け位置を変更する事で、グラフ上の平行移動のみ可能です。(レオンでは禁止です)早くすると中低速のパワーが出ますが、高回転で頭打ちが出ます。基本的には圧縮比を上げるのと同等とお考え下さい。遅くすると、圧縮比を下げるのと同じ考え方になります。(細かく言えば違いますが)

チャンバーは簡単に申し上げると、全長が長いと低速型、短いと高速型、最大径が大きく、エキパイ部やテールコーン部のテーパー度が大きいと、排圧が掛かりますのでパワー、トルクが出ますが、パワーバンドが狭くなり、セッティングもシビアになります。またサイレンサーの内径が狭くても同様の方向になりますが、排圧を上げすぎるとデトネーションが起き易くなり、トラブルの元になりますので、注意が必要です。またサイレンサーのグラスウールは消耗品ですので、本来は定期的に交換しないとサイレンサー部に不必要な拡張部が出来てパワーダウンになります。レオンの50の様にサイレンサーを増設している場合も接続部に隙間が出来ると同様のデメリットが考えられます。(レオンチャンバーはテールコーンの絞りも少なく、あまり排圧が掛かっていない様なので、良くなる場合も有り得ますが。)

後は実際に出来る変更要素として、エキゾースト部にグラスウール等の断熱材を巻いて、排気温度を上げ、理論上の管長を短くする事で、エンジン特性を高回転型にする事が可能です。しかしオーバーヒートの元にもなりますので、ウエット走行時(レオンカートはチャンバーが剥き出しの為、ウエットでの特性変化が激しいので、巻いた方が良いと思います。実際の比較テストはしていませんが、2サイクルのロードレーサーでは20%程パワーダウンします)以外は注意が必要です。

後はキャブレターのセッティングについても言える事ですが、エンジンの冷却効率が悪い為、パワーが出る特性にしていくと、燃焼温度が上がる為、一時的には良くても、走行によるオーバーヒートによって返ってパワーダウンを招きますので、注意が必要です。

他にもシリンダ−ポートタイミング、燃焼室のスキッシュ率、吸気系(キャブレター、リードバルブ、マニホールド形状等)等、挙げれば限がないので割愛させて頂きます。

キャブレター

カートの場合、アクセルの全開率が高い(80%以上)ので、ほとんどメインジェット(以下MJ)のみしかドライバーは体感出来ない様です。レオンで使用しているキャブレターは汎用エンジンベースの為、MJの受け持つ回転域が広く、エンジン特性まで変わってしまいます。

40ccにチャンバーを着けたオープンクラスの場合は特に特性変化が顕著に出るようで、回転域で言うと8500回転以下では(全開の場合)MJを濃いめの75〜80番にするとパワーが出ますが、高回転では露骨にパワーダウンします。逆に9000回転以上では65〜70番位に絞るとパワーが出てオーバーラン特性も上がります。

ですので、MJ(エンジン特性)やドライバーの体重、LAPタイムによって、ファイナルを選択すれば良いでしょう。(MJを濃い目で中低速型の場合はロングファイナル、薄めは逆です)

気象条件によるセッティングの方向ですが、様は一定空気中の酸素密度で変わりますので、気温が高い、湿度が高い、気圧が低いと酸素密度が下がりますので、MJ等は絞って薄めのセッティングになります。

オイル

混合比、簡単に答えれば、30〜40:1と言うところなのですが、出入りしてるロードレースチームのエンジニアの言葉を借りて、少々、理論も書きます。 ただこれはエンジニアそれぞれが理論、ノウハウを持っていますので、参考までに。 混合比はまずオイルのブランドによって大きく違いますので、そのオイルメーカーの推奨する比率が前提になります。 レオンでレース時に支給されるガソリンはAisynというメーカーのPRO Power21というオイルを40:1で混合していますので、レオンのレースに参戦する場合は同様にした方がセッティングを出し易いです。

当家は98,99とWGPもてぎ時にレッドブルヤマハから頂いた(GPチームは日本ラウンド時、余ったGASを送料の方がかさむ為、置いていく事が多いです。ちなみに今年、Dinkyは宇井選手所属のDERBIワークスから120L貰いました)ニューテックというスペシャルガソリンのMOTUL30:1混合済み(L1000円近い)を使っていた為、かなりはまりました。

当然火炎伝播特性が良く、デトネーションも起き難い為、圧縮比を上げても、絞っても(薄くMJを下げる方向)トラブルもなくパワーも出ます。オイルも混合比が違う事も勿論ですが、潤滑性能も違う為、いきなりGAS、オイルが変わった本番では、予選1LAPで焼き付いた事が2回もありました。個人的にはAisynも30:1の方が(特に筑波等の直線が長いコースでは)良いと思っていますが。

但し直線の短いカートコースの場合、30〜40:1では未燃焼オイルが残り易く、カーボンスラッジ、サイレンサー詰まりが起き易い様です。2001年シーズン、当家では前述のDERBIワークスから頂いたアジップのスペシャルガソリンを使用している為、60:1で走行しています。電気、圧縮を変更してのテスト中に1度だけ軽い抱き付きを起こしましたが、基本的に快調でトラブルはありません。

本題に戻りますが、オイルというのは当然の如く、潤滑用の為、少ないほど燃焼パワーは上がります。しかし少なすぎてはトラブルの元になりますので、ぎりぎりの妥協点を何処で見つけるかです。

2サイクルエンジンの場合、エンジンに必要なオイル量は、ピストンスピード(ストロークと回転数によって変わります)ピストンクリアランス、燃焼温度、ピストン、シリンダーの材質(熱膨張率)によって決定します。

という事は、コース、ファイナル、MJ、LAPタイムによって変わってきます。例えるならMJを上げると、燃焼温度は下がるにも関わらず、供給されるガソリン量が増えますので、当然比例して、オイル量も増えてしまう訳です。ですのでシビアなワークスGPチームでは、キャブレターセッティングによって、オイル混合比をシビアに変えているチームもあります。

しかし基本的には、オイル混合比は一定にして、走行条件に合わせて、キャブレターセッティングを詰めていった方が、良いでしょう。


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